すすきの十六夜
試着
すすきのの衣服直しの店へ、バーを営む四十八歳の男が、派手な上着を持ち込んだ。
「袖、少し詰められる?」 「着てみて」 店主の澄江は、男が鏡の前に立つと、まず肩をつまんだ。
「これ、誰の?」 「俺の。二十年前の」 「肩に座布団でも入ってるのかと思った」
周年の日に着るつもりだった。昔の写真を店に飾ったら、若い従業員が見たがったのだ。
「あの頃は、これが普通だったんだよ」 「普通の服なら、二十年も取っとかないでしょ」
肩の詰め物も抜くことになった。澄江は袖を折り、まち針を打った。男は腹を引っ込めた。 「息して。縫うのは私だけど、着るのはあんたなんだから」
翌日、直った上着を着ると、袖口から時計がちょうど出た。 「少し若く見えるかね」 「袖はね」
男が帰りかけたところへ、二十六歳の従業員が衣装の袋を持ってきた。 「同じ感じにできますか。店長と並ぶんで」
澄江は男を呼び止めた。 「座布団、捨てるの待とうか」