すすきの十六夜
源氏名
南五条のスナックで、二十三歳の新人が名前を決めかねていた。
「本名じゃ駄目ですか」 「いいけど、珍しい名前だと検索されるよ」
ママに言われ、携帯を伏せた。 「じゃあ、ユキ」
カウンターの端で、古い客が顔を上げた。 「昔もいたな、ユキちゃん」 「どこの店?」 「忘れた。いい子だった」
ママが黙って水割りを置いた。
客が帰ってから、新人は聞いた。 「その人、知ってるんですか」 「私よ」 「言えばいいのに」 「いい子だったんでしょ。だったら、そのままにしとく」
翌週、男はまた来た。 「ユキちゃん、いる?」
二人が同時に返事をした。 ママは咳払いをして、氷を足した。